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切手

 
2月 某日  晴れ

イチゴの花と実を写生風に描いた切手で知人から封書が届いた。
何のシリーズの切手か検索すると、文政十一年に完成した日本最初の本格的彩色植物図鑑、『本草図譜』の明治初期の写本から十種の植物を採用したものだった。
イチゴの他は、

ビワ
ダイダイ
アンズ
キンカン
ワサビ
ニンジン
エンドウ
フキ
ダイコン
だった。

画像を見ると、地味な色合いのものもそれぞれにきれいだが、私はやはり、可憐さではイチゴが一番だと思った。


3月 某日  晴れ

友人から届いた封書にまたイチゴの切手が貼ってあった。
青山の花屋では毎年4月ごろだったか、鉢植えのイチゴが売られていて、実を食べるためではなく花と葉を須恵器やガラス瓶に活けるために買っていたことを思い出した。
今の事務所では張り合いがないので花を活ける生活から遠ざかっている。


3月 某日  雨

知人の個展の案内にまたイチゴの切手が貼られていた。
このシリーズの切手では、他の植物で届いた郵便物はない。
これはもう、差し出し人にとって私はイチゴのイメージなのに違いない。