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水玉模様


何か写真を撮ろうと室内を見渡して、竹久夢二の童話集『くさのみ』が目にとまる。

これは探して手に入れたものではない。
竹久夢二の本や版画を蒐める趣味があるというわけではなく、持っているのはこの一冊だけだ。
20年くらいまえに骨董の市場でたまたま見かけて、水玉模様の表紙が気に入って買った。
それから5年くらいして初めて読んだ。
装丁だけが竹久夢二なのだと思い込んでいたけど、童話も竹久夢二の書いたものだと知った。

大正四年の紙と糊は乾ききっていて、ひらく時はいつも気をつけていても今日はいよいよ背表紙がはずれた。
旧字体や旧仮名づかい育ちではないのになんだか懐かしく、さいしょの頁の、巌谷小波によせた著者のはしがきだけでも涙ぐむ。

 

童話集といってもこれは、子供当人よりも子供だったときの思い出を持つ人(大人のことデス)でないと、しみてこないように思う。

 

読むたびにいつも自分は昔風になって「嗚呼ッ、、、」となる。

 

 

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 扉には「草の實」、もう少しめくると「艸の實」とあるが、背表紙は「くさのみ」になっている。