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移転

長く勤めていた古美術店では、それはそれはとんでもない物量の移転を5回ほど経験しているので、今回の自分の移転くらいはそう大変ではないし、むしろ荷ほどきや納める場所を考えて荷造りするのは好きな作業だ。
引越業者だって、いくら専門とはいっても一目してうんざりするような荷造りも世間にはあるだろう。
草友舎に足を踏み入れた時の第一印象として、やる気を発揮してくれるよう、気持ちよく仕事をしてくれるよう、荷造りしたものを更に大きさや形ごとに整理して部屋の端に重ねていく。

その日は、これまで配置していた展示台や棚を室内の一画に集めていた。
白い展示台を動かすと、奥のほうに褪せた薄茶色の小さな乾いた粒が数個、散らばっているのを見つけた。
最初、何だか分からず、拾うのを躊躇って見ていたが、これは一昨年、小さな信楽の壷に入れた紫式部の実にちがいない。